トマトバルクの三角筋

世界じゃそれを愛と呼ぶんだぜ

レート対戦における「勝負」という概念について

ふ~、昼休み。弁当食うか~。

と、言ったって昨晩の残り物と冷凍食品の詰め合わせである。母親はガサツ。初恋の人は母親に似てるだとかいうテンプレは僕には当てはまらなかった。弁当箱を包む布は粗雑に結わえられて、結び目に、担任の教えで暖房が付いていない師走の教室で悴んだ人差し指が苦戦する。クラスメイトの大宮が僕に話しかけたのは、ちょうど両手を擦り合わせてハーと息を吹きかけて結び目に挑もうとしたそのとき。

 

「なあ、トイレいかね?」

 

いや連れションかよ、しかもこのタイミングで?なんだお前

と、思いながらも「おう」と小さく呼応のように返事をして席を立つ。2年5組はフロアの端にあるからトイレまで1番遠い。

 

「お前、オナニーしたことある?」

 

急に言われたもんだから驚いた。何を言い出すんだコイツは。てか、どう答えればいいんだ。もちろんしたことはある。むしろ毎日している。でもそれを素直に言うべきか?素直に「うん!毎日3発ぶっんこいてるよ!大宮の小宮は元気かい?つんつ~ん!」だなんて言ったらドン引かれアンドクラスの笑い者確定。ここは差し支えのない答えを…。

 

「いや、まあ、したっ、ことっ、つーーか、興味は、ね」

 

い~や、しどろもどろ。嘘つくの下手だな~。大宮は何食わぬ表情でウンウンと聞いている。

 

「だよなあ、そんなもんだよなあ」

 

恐らく差し支えのない答えに対する返事。ちょうどいい差し支えのなさだったみたいだ。

 

「オレ、こないだ初めてシてみたんだよ」

 

ドキッ。大宮は見た目ガッツリ男臭いし余裕で性欲の塊みたいなやつかと思っていた。そしたら、「こないだ初めてシてみた」!?僕の「興味は、ね(笑)」みたいな答えはあくまで暗黙の了解みたいなもので、男子中学生たるもの全員が毎晩天使もえと、紗倉まなと、橋本ありなと、松岡ちなと、上原亜衣と絶頂を共にしているものだと思っていた(天使もえはほぼ付き合ってるようなもんだから大宮には渡さん許さん)。それが、「こないだ初めてシてみた」…と。

 

「ぇ、へえ、どうだった?」

 

「どうだったっつーかぁ…」

 

大宮が立ち止まって振り返って目が合った。漫画ならほぼ確実に「ニヤ~リ」と表現されるであろう表情。

 

「気持ちよかったァ…」

 

まるで感心するかのような言い方。そうかいそうかい、君も性の扉を開いたかい。早くその悦びの虜になるがいい。

2人はゲラゲラ笑い合った。(デュフヒヘの方がリアルかもしれない。)

昼休みが始まってすぐ。パンを求めて売店へ走る生徒達の足音で廊下は騒々しい。トイレに入って、音は小さくなる。大宮に手首を掴まれる。

え、何するの。連れションじゃないの?

大宮はやけに目が泳いでいる。

 

「オレのオナニーを見ててくれないか」

 

ギョ、ギョエ~www。びっくりしました。ただ悪い気はしなかった。どうしてだろうか。そのとき、なぜだかぼーっとした状態にあった。何かの「目覚め」だろうか。むしろ目は覚めてない状態なのだが。「ウン」と二つ返事するのもおかしい気がして、目を丸くして大宮をジーっと見たのち、少し間を置いて、

 

「ウン」

 

と、ひとつ。「おおっ!」という表情の大宮。ハシビロコウを思わせる眼光でこちらを睨みつけるように見つめてる。掴まれたままの左の手首を引かれて2人で個室に入った。このフロアには講堂があり、保護者会などで使われるため、トイレは綺麗に保たれている。白いタイルが目に飛び込んでくるより先に耳に飛び込んできたのは、大宮がベルトを外そうとしているチャカチャカという音。おもむろにズボンを下ろして、パンツは太もものあたりまで下ろして。「コンニチワ」と言いたげに、そろりそろりと下ろされるパンツから顔を出した彼のブツ。彼は「それ」をムンズと右手で大きく掴み、シコシコと「それ」を始めた。かわいい。

仮性包茎の包皮が亀頭の距離を行ったり来たりするのがかわいいと思った。少し腰が引けている彼はたまに僕のことを見て、「誰かに見られている」という事実に興奮しているのだろう。僕も誰かのオナニーを間近に見るなんて初めてだからかなりまじまじと見ている。それにも興奮してるのかな。必死に、覚えたてのオナニーに勤しむ彼の姿は健気で、愛嬌があった。かわいい。

「それ」を始めて数分のこと。

 

「やべ、もうイキそ、、」

 

個室の外に漏れぬよう小声でものを言う彼の右手はリニアモーターカーを、大気圏から抜け出すスペースシャトルを、ラーメンズ「人類創成」におけるギリジンの腕立て伏せをも凌ぐスピードで僕の目の前を、男の自転軸を中心に前後している。

「ムクムク」「ビンビン」「ガチガチ」そんな言われ飽きた擬音語がぴったりそのまま今の彼のブツを修飾するに足るのだから、先人の言語感覚には脱帽だ。

 

「あ、あっ、う、、」

 

カランコロンカランコロンと音を立てるトイレットペーパーホルダー。シングルのトイレットペーパーを素早く巻き取り、そこにまたしても「ドピュドピュ」という先人の言語感覚に感心しながら、自転軸の先端、北極か南極か、はたまたガラパコス諸島か、彼の全神経が集中する1本の肉の棒から精液を吐き出した。

一呼吸置いて、

 

「…ふう。イッちゃった…」

 

と、右手にしおれた「それ」と左手に白濁粘液がへばりついたトイレットペーパーを携えた彼は情けなさそうに言った。

トイレの個室から出るのに2人同時はまずい。誰かに目撃されたなら、何かしらよからぬ話が立つだろう。1人ずつ出ようと言い、しっかりパンツを穿いた彼は先に「ここ」を後にした。彼がいなくなった後、「ここ」で僕はオナニーした。そりゃあもう思う存分ぶっこいた。彼の半分も時間をかけずに絶頂に達した。

大宮の小宮は大宮。

今夜のオカズはあべみかこ。

今日の天気は雨のち曇りのち晴れ。

いい日だ。

 

 

 

それから3週間。

ふ~、昼休み。弁当食うか~。

と、言ったって期末テストを直近に控えた今、弁当を食べながら勉強の一つや二つするべきである。英語の単語帳を取り出し、乾燥した100円ショップの単語帳に、担任の教えで暖房が付いていない師走の教室で悴んだ人差し指が苦戦する。大宮が僕に話しかけたのは、ちょうど右手の人差し指をテロンと舐めて"happiness"をめくろうとしたそのとき。

 

「なあ、トイレいかね?」

 

いや連れションかよ、しかもこのタイミングで?なんだお前

と、思いながらも「おう」と小さく呼応のように返事をして席を立つ。3週間前に彼のオナニーをまじまじと目撃してから特にこれといって気まずいことはない。これまで通り普通に接している。

 

「なあ、この前どう思った?やっぱ引いた?」

 

これまで通り普通に接しているとはいえ3週間前の話をするのはこれが初めて。

 

「ん、いやそんなに、まあ誰でもしてることでしょ」

 

正しいのか分からないフォローのようなものを挟みながらトイレまで歩く。流れ的にまた見ててくれと言うのだろうか。僕の"happiness"を遮るこれは果たして幸福と数え得るのか。

 

「そうか、また見ててくれないか?」

 

前回があったから互いに特に恥じることもなく、僕も二つ返事で了承した。

個室は3週間と同じ場所。奥から3つ目。手前から数えても3つ目。

前回と同じようにズボンを下げ、パンツは太もものあたりまで下げる。前より少し大人になった彼のブツは既に膨れ上がっている。ワシリと掴んでシコシコと前後運動。仁王立ちでオナニーする彼の姿とはまさに2016年東京都知事選における後藤輝樹の全裸選挙ポスターと言えようか。立派で品格のあるオナニーであり、非常に自身の自信に満ち溢れたオナニーだ。シャレである。

 

「んっ、(シコシコ)、なあ、(シコシコ)」

 

「なに?」

 

「い、あの、ななな、舐めてくれないか?(シコシコシコシコ)」

 

ギョ、ギョエ~www。である。もう1回言おうか。ギョ、ギョエ~www。これはフェラチオというものを要求されているのか!?毎日元気に7時間睡眠と数十分のオナニータイムを両立して自我を保っている僕にそんなことを…。

 

「お願い…(シコシコシコ)」

 

亀頭は我慢汁で鋭く光っている。彼の右手は実態の存在を疑うほどに速く動いている。さて、この際冷静な判断を仰いでいる場合ではない。性的興奮、ましてや思春期真っ只中の日本男児が絶頂寸前の同級生を目前にして罪悪感と隣通しの背徳感を得ている今、現実問題などというものが思考の片隅にでも介入する余地はない。さあ僕、やっちゃえ日産。

彼のブツの根元から3cm、膨らみかける丘陵の麓を左手の人差し指、中指、親指の3本でソワリと摘む。匂いはまさにイカ臭さ。肌の色髪の質つむじの数に関わらず男たるもの全ての人間に等しく分配される日本武尊。「等しく」はデマである。タイガーウッズのブツはオードリー春日のブツの2倍ある。そんな草薙剣にゆっくりと口を運ぶ。上唇で軽く亀頭に触れてみる。彼は「うっ」と吐息混じりの声を出す。亀頭は意外と柔らかいものなのだと思った。下唇も徐々に近付け、唇でハムッと亀頭を挟む形になる。恐る恐る舌を前進させる。東南アジア、あるいはアマゾンの密林を人喰い族に怯えながら進む探検隊よろしく、僕の舌は一歩一歩に重みを感じながら彼のブツを目指して歩み寄っていく。大蛇にピラニア、それから死をもたらす感染病を移す蚊にだって怯えるものだ。ふと。舌が何かに当たった。唾液ではない何者かの粘液によって満たされた「それ」は温かかった。と同時に彼が「ふっ…うんぅ…」という、紛れもなく「エロい」声を上げた。そのとき、舌から伝わる柔らかさの中に芯を持った熱く迸る何か、肉の塊が彼の肉棒であることを僕の脳は理解する。感受的な興奮は後から来るものとして、脳が理解してしまったからにはもう興奮は興奮。激しい興奮。画面の向こうの天使もえなどどうでもよくなるほどの「生」の性を感じている。僕は、いつも自分がいつかされると夢想していたフェラチオに夢中になっていた。夢中にしゃぶりつき、AV女優を見よう見まねで口を前後させる。「あぁ…あっ、あうっ、あぁ、あいぅ、」と情けない声を上げる彼が唯一日本語を喋ったのを聞き取れた。

 

「あの、イマラチオみたいな、こと、手で頭押さえて、していい?」

 

正式にはイラマチオである。だがしかしここで「おめぇそれイラマチオのことか?間違ってんぞおめぇ、そんなありきたりな間違いする奴の短小包茎クレパスなんざァ、見たくもないねぇ!ケッ!やーめたやめた!このこと全校生徒に言いふらしたるわオタンコナス!」と言ってしまうことはない。僕は夢中でイマラチオを望んだ。

顔を縦に振ったら、亀頭の先端の敏感な部分が喉の奥の壁にチョコンと当たり「ふぁああ、あうっ、、」とこれまでより一回り大きく声が出た。その声がヨーイドンの合図の如く、彼は僕の頭を両手で持って顔を前後させた。喉の奥にブツが突っ込まれて苦しい。ただ興奮する。ガシガシと彼の下腹部に顔を押し付けられ、口の中の暴れん坊将軍マツケンサンバをノリノリで踊っているものだから脳なんか動いていない。これぞトランス状態である。

 

「やばいっ、出るっ、!」

 

いやいや、手離して、まさか口に出すつもり!?「出るっ、!」を耳で聞いてから脳にたどり着いて「やめてくれ」という考えが生まれる前に、彼のナイススティックは「ま~いに~ちおいし~デイリーヤマザキっ♪」のビートを刻んで僕の口に注がれた。確かにどこかで、「ドピュドピュ」という音を聞いた。舌の裏に溜まった精液は無味。いや、味を感じることすら忘れるほど夢中で性的興奮に溺れていただけかもしれない。と、そのとき。気付いたら、僕もパンツを脱いでブツを握っているではないか!なんということ、「恋は盲目」に次ぐ「オナニーは盲目」。あまりの性体験に自然とブツをしごいてしまっていたのか。人間とは恐ろしいものである…。彼がトイレットペーパーでブツの先端を拭いている仕草に、これまでとは一線を画したフェチズムを覚え射精に至った。床にぶちまけた。

 

「あの、ごめんな…」

 

蛇口を捻って口をゆすぐ僕と鏡越しに目を合わせて、申し訳なさそうな文言を照れくさそうに言うのは射精直後の少年であり、同時に、「秘め事」を持った2人の片割れである。

 

「ああ、なんか、すごかった」

 

興奮の冷めぬ中「すごい」という宇宙を代表する抽象的な表現しかできなくなっていたほど頭の中に性の爆弾を抱えていたのは事実である。

大宮の小宮は大宮以上に大宮。

今夜のオカズはあべみかこ。

今日の天気は晴れ晴れ晴れ!

匂いが気になってコーラをガブ飲みしたら腹を壊してトイレに駆け込み、そこでまたオナニーしたのは誰とも共有しない秘め事である。